凡人の戦い方

凡庸な人間が足掻く術(あるいは足掻いた歴史)を記す


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低音障害型感音難聴になった話

始まりはある朝の事でした。

いつも通り朝起きて準備をして家を出ました。当時は寮に住んでいましたが、他の人たちよりも早い通勤をしなくてはならなかったのでまだ静かな寮でした。

確かにその時点で変な耳鳴り(「キーン」や、「ピー」ではなく、「ザー」という音)と違和感はありましたが、いつもの体調不良だろうと、幾度となく医者に言われた自律神経失調の類だろうと思っていました。

が、人もまばらな駅で友人に話しかけられたとき、その違和感は確信に変わりました。

「人の声が聴こえない」と。

 

 

 

はじまり

今は辞めた会社での話です。

新卒で開発部門に配属されて半年が経った頃、仕事は最初の山を迎えていました。

他のチームからはその様相から「戦争末期」、新人の私が一人で作業させられるのを「学徒出陣」と言われていました。

その言葉は何も間違っていません。上の暴走と大本営発表、夜勤残業休日出勤で開発し、ろくに安全教育も終わってない新人に評価業務を単独でさせるような状況だったのですから。

嫌な人間がチーム内にいないのは幸いでしたが、優しくて人の頼みを断れない人ばかりで、仕事を押し付けられていたため必然的に人手不足になっていました。

 

出勤

冒頭の表現、正確に言えば「耳が詰まったような感じで、聞こえるが非常に聞き取りづらい」というべきでしょうか。

「とりあえず様子を見てみよう」

別に大したことではないと思ったので一緒に通勤していた友人にもそのことを伝えたところ、「病院に行くべきだ」と言われました。

正直、病院は気乗りしなかったです。

新人とはいえ戦力低下をすれば確実にあとの仕事が増えます。いま思えば、そんな部署だから耳が聴こえなくなったのかもしれません。

 

病院の実力は

「半日休めばいけるじゃないか」という友人の意見に納得し、午前中に病院に行きました。

まだこちらに移って間もなかったため、会社が経営する病院に向かいました。社内で何かあったときはそこに一旦運び込まれるため総合病院となっています。

耳鼻科の受付を済ませて待合室で待っていました。

周りは近所のおじいさん、おばあさんばかりでしたが、耳の聴こえでは私も変わらなかったでしょう。

診察が始まると問診とライトとカメラを使って耳を検査し始めました。

この時、私が医師の表情を見て思ったのは「この人大丈夫だろうか」という不安でした。神経質な私にはこの人が困惑しているように見えたのです。

続いて聴力検査を受けました。よく健康診断でボタンを押せと言われるアレです。聴力を測るために徐々に音量が上がるという説明を受けました。

やってみてわかったのですが、意外と「ピー」とか「キーン」といった音は聞こえるのです。

「案外、違和感だけで音は聞こえてんのかな」

そう思ったときでした。おそらく何かの音は出ているのですが聴こえません。しばらくするとヘッドホンが振動し始めました。よほど大きい音を出しているのでしょう。

「これだけ振動してるのだからたぶん低音だろう。でも聴こえない…」

かなり振動が大きくなってから、やっと音を認識できました。検査をしてくれた方から「低音が聴こえにくいみたいですね。先生にデータ渡すので少し待っていてください」と言われたのでまた少し待っていました。

「低音が聴こえない」

確かに言われてみれば聞こえないのは人の声。全体的にボヤッとした聴こえ方をしていましたが特に人の声は聞き取りにくかったかもしれません。

ただ、思い当たるフシがないのです。酒もタバコもしないし、ヘッドホンも大きな音が苦手で使わないのですから、物理的に聴覚にダメージが入るようなものがないのです。

先生に呼ばれ、第一声に驚きました。

「低音が聴こえないみたいですね…。それ以外は分からないです。」

そんなデータ取ったら分かるような話を聞きたいとは思ってないしなんでわざわざ患者を不安にさせるんだと呆れました。

「とりあえず関係する薬を出すのでそれを飲んでみて下さい」

と言われたときには『言ってる意味が分からない。耳がおかしくなったのかな、いや、確かにおかしくなってるわ。』なんて思っていました。

その日は薬を貰い、会社へ向かいました。

 

治療開始

職場では「大したことないですよ」なんて言ってましたが、内心めちゃくちゃ不安でした。「わからない」ってなんだよと。

薬は6種類くらい出されました。『ステロイドってとりあえずで出していい薬じゃねぇだろ』なんて思いながらネットで調べると、低音障害型感音声難聴というものを知りました。

原因はストレスと考えられているようで、対処はステロイドによる薬物治療とのことでした。結果的に数撃ちゃ当たる戦法の医師の選択は当たっていたことになります。もし低音障害型感音声難聴の可能性があると分かっていたなら何故言ってくれなかったのか。「分かりません」と言われるより既知の症状名がついている方が普通の人は安心すると思うのですが。

また、ネットを調べた結果としては治療が遅くなれば完治の可能性が下がるとのことでした。友人のアドバイスに感謝しなくてはならないなと思いました。

 

治癒と予後

実際、薬を飲んで2日後くらいには体感ではほぼ回復しており、3日後の検査でも正常値となっていました。

結局、会社の近くに耳鼻科がなかったこともあり、通勤途中に寄ってから会社に行く、という生活を何週間かしました。

いまでは基本的に完治していて、音も問題なく聴こえます。

たまに朝起きたり、何かの拍子で左耳が聴こえない(最初の症状も左が酷かった)ことがありますが、しばらくすると落ち着きます。

なお、会社が経営する病院の話を社内ですると「あそこはヤブ医者だから」と言われていましたが、体感した身としては心から同意できました。

 

まとめ

長々と書きましたがまとめとしては、

  • 声が聞こえない、「ザー」という耳鳴りがする時はさっさと病院に行く
  • 言われた薬はちゃんと飲む(特にステロイドは用法容量を守る)
  • 出来ればちゃんとした医者に行く
  • そもそも変な会社に勤めない

という感じでしょうか。

再発はするかもしれませんが決して治らない病気ではないので、まずは早めに病院に行きましょう。

皆さんの健康を祈っております。