凡人の戦い方

凡庸な人間が足掻く術(あるいは足掻いた歴史)を記す


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0から始める振動評価、はじめの一歩

ru_acです。元々自分は計算化学の出身で振動評価なんて知りませんでした。というか未だに「わかった」とは言いづらいです。

ですが、「仕事で急にやる羽目になった。高校物理の波とかすらわからん…」という状態からなんとか仕事で使えるレベルまで持ち込めました。辞めたし転職先では違う仕事してるけど

今回は、私と同じような状況に陥っている人のために少しでもお役に立てるような記事を書ければと思います。

なお、この記事はあくまでも「はじめの一歩」です。厳密性を捨ててでも概要を知るための記事と考えてください。

もし詳しい方がいれば私の代わりに記事を書いてくれると嬉しいです。

 

振動評価の目的

振動評価の主な目的は「想定される市場での使われ方では壊れない」だと思います。生命に関わる重要な部品などでは「安全に壊れる」(壊れ方のコントロール)ことも要求されます。また、振動時の異音が評価の目的になることもあります。

評価内容

評価内容としては大別して以下のようなものになると思います。学術用語は知らないので一般的な呼び名かは知りません。

共振点評価

一発破壊評価

疲労破壊評価

共振点評価は振動試験機(例: Aシリーズ(ハイグレードタイプ振動試験機) - 製品情報 - IMV株式会社)やインパクトハンマ(例: 8206型 - ブリュエル・ケアー)などの試験体に加振力を加える装置と、振動ピックアップ(例: 超小型ICP®三軸加速度計 | 東陽テクニカ | )を使用して共振点を見つける評価です。ユニットとして共振点評価評価する事(例えば車両評価とか)もありますが、基本的には単体試験(ECUやディスプレイ単体)です。共振については別の項で解説します。

一発破壊評価はその名の通りで、頻度は低いものの想定される衝撃の中で最も高い加振力で対象を加振し評価します。車でいうと事故による衝突のようなイメージです。特に解説することはありません。とんでもない力をかけたら金属だって壊れます。

疲労破壊評価は製品ライフサイクルを通じて入力される加振力で疲労破壊するかを評価します。疲労については別の項で解説します。

評価の流れ

わざわざ項目を作るほどでもないですが基本的な流れは

測定点を抽出(事前に数値解析で絞っておくことが多い)

加速度ピックアップまたはひずみゲージ(ひずみについては後述)を取り付け

加振機または実際の機器を動作させて加振(ハンマリングの場合はインパクトハンマ)

得られたデータを解析

という流れになります。

測定点を抽出する際は、

  • よく振れる(≒応力が高い)ポイント
  • 振動モードで腹の部分になっている(節になっているとモード次第ではよく分からない)

を優先的に評価するとよいです。

一部の特別な評価(外部認証試験など)では加速度ピックアッブやひずみゲージを取り付けず加振して機能や外観などに不具合がないかをチェックするだけの場合もあります。

「モード」というのは振動の仕方だと思ってください。

例えば一枚の四角い鉄板でも、真ん中がベコベコ振れる振れ方もあれば四隅が振れる振れ方もありますし、ねじれるような振れ方もあるかもしれません。この振れ方のことを「モード」と呼びます。

振動評価でつまづくポイント解説

応力とひずみ

まず説明しなくてはいけないのはここでしょう。

物が壊れるのはなぜ起こるか?それは力[単位: N(ニュートン)]が加わるからです。

例えば同じ材質の太さが違う2本のワイヤに力を加え、徐々にその力を大きくしていったとします。ある力に達したとき、細いワイヤが先に切れるでしょう。

では同じ力であるにも関わらずなぜ細いワイヤが先に切れたのか。

それは先に切れたワイヤが細いということは、「単位面積当たりにかかる力が大きい」ということを意味します。この単位面積当たりにかかる力を「応力[単位: Pa(パスカル)]」と呼びます。身近な応力だと「圧力」も応力の仲間になります。

困ったことに応力もせん断応力と垂直応力に分けられ細かい話が色々あります。ただ、話がめんどくさくなるし数式も出てくるのでここでは割愛します。詳しくはネットにある大学の講義資料を眺めてください。

とりあえず応力の概念がわかれば次に進みます。

物質は力を加えれば変形します。引っ張れば伸びるし押しつぶせば縮みます。(変形も塑性変形と弾性変形があるのですがそれはおいておきます)

例えば圧縮される例を考えます。1000 mmの棒を圧縮したときに0.01 mm変形したとします。このとき、「元の長さに対してどれだけ変形したか」を示す指標として「ひずみ[単位: なし]」があります。

ひずみゲージはこのひずみを観測することで間接的に応力を計測していることになります。測定されたひずみはS-Sカーブまたは応力-ひずみ曲線を用いて応力と対応させます。

応力やひずみで制御するのは物性を把握するためには必要ですが、製品評価においては応力やひずみ制御で加振するケースは少ないと思います。実際、車載系の規格では加速度[単位: m/s^2など](一部は変位[単位: mmなど])で制御するものしか見たことがありません。製品にかかる応力は入力の結果生まれるものであり、その入力として使いやすいものが加速度のためです。

 

変位と加速度 

感覚的な説明で申し訳ないのですが、イメージとして「大きく振れている(変位が大きい)」ものにかかる応力は大きくなる印象を受けると思います。ということは、振動評価を行う場合、変位で制御すればよいということになります。

しかし、変位というのは直接計測するのが難しく、現実的な選択肢にはなりません。そこで、代替手段として用いられるのが加速度です。加速度であれば振動ピックアップと呼ばれる小さなセンサで計測することが可能です。(振動ピックアップの細かい説明は省きます)

高校物理で習ったと思いますが、変位の二階微分が加速度です。ということは加速度で制御することで間接的に変位量を制御することになります。

 

絶対に逃げられない共振

振動評価を行うと必ず出てくるのが共振です。

そしてこいつをどうするか、というのが振動評価で求められます。

共振というのは振動評価、機構設計では逃れられない宿敵であると思っています。

まず共振とは何か。学校の理科で「共鳴」という単語を聞いたことはないでしょうか。音叉の写真が写っている事が多いあれです。

「え、共振と共鳴は一緒なの?」

と思われるかと思いますが、私の知る限り一緒です。呼び方が違うのは理学系と工学系の違いに起因するようです。虚数単位のiとjみたいなものですね。

教科書的な厳密な説明は出来ませんがざっくり言えば

「物体にはそれぞれ揺れやすい周波数がありその周波数で加振されると入力の何倍も揺れる」

という現象です。1Gで加振したのに3Gで振れる、なんてことが起きる訳です。

読み物としてもわかりやすいので以下のページを紹介しておきます。

sla.cls.ihe.tohoku.ac.jp

 

「1Gで揺さぶってるのに3Gも振れたらエネルギー保存則に反してない?」

なんて思った方もいるかも知れませんが反してません。(気持ちはわかります。私もそう思いました)

ポイントは共振という現象が周期的な外力による強制振動である点です。

つまり絶えず外からエネルギーが供給されている状況であるということです。

詳しくは以下を参照していただければと思います。

http://www.ns.kogakuin.ac.jp/~ft13245/lecture/2018/PhysE/PhysE_01.pdf

 

ちなみに

「ああ、熱伝導率みたいな物性値なのね」

と思った方。それは違います。もちろん材質は関係しますが材質だけでは決定されません。

構造、材質、組み付け方…

そういったものが合わさった結果が共振として現れます。

例えば締結点が変われば振れ方のモードも変わってきます。

 

共振への対応としては「実使用範囲では共振させない」のが望ましいですが、それが難しい場合は共振倍率を下げる(=減衰しやすくする)方法を取ることがあります。この辺はコストとの兼ね合いです。そもそも共振したって入力G自体がそもそも大きくなければ大した揺れにはなりません。

また、複数の部品が組み合わさるシステムでは個々の共振点を離さなくてはなりません。例えばブラケットAにユニットBが取り付く場合、AとBそれぞれの共振点が近いと、個々の共振倍率が小さくても組み合わさったときに大きく振れることがあります。

FFT解析の罠[工事中]

(そのうち書きます)

振動波形色々[工事中]

(そのうち書きます)

疲労[工事中]

(そのうち書きます)