凡人の戦い方

凡庸な人間が足掻く術(あるいは足掻いた歴史)を記す


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リチウムイオンバッテリの「ウソ」「ホント」

最近めっきり更新をサボっております、ru_acです。

会社が変わってすっかりホワイト化したと思いきや、職場環境が変わったおかげで人間関係周りによるストレスがバク上がりした結果色々な精神疾患を発動させております。

 

今回は巷でよく言われるリチウムイオンバッテリ(リチウムイオン電池)の噂(?)について、車載エンジニアの立場から検証をしてみたいと思います。

スマホやゲーム機などの民生品でも同じ考え方だろう」ということで書いてますので、もし「民生じゃ違う考えしとるわ」というコメントがあればよろしくおねがいします。

今回はよくいろいろな人から質問される内容について記載します。

どれもそうなのですが、「全くの間違いではないけど、誤解されている」という内容がほとんどです。

【おすすめの参考文献】

                     

 

 「継ぎ足し充電は良くない」

良くはないですが、気にするほど悪くもないというのが自分の考えです。

おそらく、かつてモバイル機器のバッテリーで主流であったニッケル水素電池の名残として言われていると思います。

ニッケル水素電池では継ぎ足し充電を繰り返すと電池自体は劣化していないにも関わらず、放電時に電圧が急激に落ちることで見かけ上容量が減ったように見える減少が起こります。これを「メモリー効果」と言います。

さて、リチウムイオン電池についてはこのメモリー効果は発生しません。ただし、充電率が高いまま保存されると劣化は促進します。目に見えて急速に劣化するわけではないので(電池によると思いますが)、継ぎ足し充電についてはしてもよいと考えています。

 

「充電しっぱなしは過充電になる」

これは嘘です。もしなるとすれば制御回路が壊れている時です。そもそも、リチウムイオン電池の充電における主流はCC-CV(定電流-定電圧)充電です。CC-CV充電というのは充電率が低いうちは定電流で充電し、ある程度の充電率から定電圧充電に切り替える方式です。これらは制御回路で制御され、一定の電圧を超えないようにします。電圧が制御されるということは徐々に充電される電流量が下がっていき、狙った電圧値の時点では充電電流がほぼ0Aになります。

過充電というのは、電池の許容量を超えて充電することですが、このとき電圧は通常の範囲から逸脱した値になります。しかし、制御されている以上は電圧監視を行っているので過充電領域に突入することはありません。

つまり、いくら充電ケーブルを刺しっぱなしにしようが、制御回路により充電が抑制されるため電流が流れることはなく過充電になることはありません。

 

「ながら充電は良くない」

これ、半分は正解で半分は嘘です。嘘の部分としては、「ながら充電自体は劣化に関係ない」という点です。で、本当の部分は「充電と放電を同時にすることによる発熱は良くない」という点です。充電ではある程度大きな電流を流していますが、ながら充電ではそのうちのいくらかは放電として使用されてしまいます。特に動画やゲームなど電力を必要とする操作では放電量も大きいため、せっかく充電器から大電流を供給してもほとんど充電されません。結果的に大電流が流れる時間が多くなり、劣化が促進します。充電単体、放電単体でも電池は劣化しますが、その劣化は高温状態でより促進されるためです。

 

「発熱時は氷や保冷剤で冷やすとよい」

嘘です。むしろやめてください。先ほどの「ながら充電」の項目では熱を持つことが劣化につながると説明しました。そこから考えると、氷や保冷材で冷却するのは名案のように思えますが、この場合、電池の冷却とは違う問題が発生します。

普通のガラスコップに熱湯を注ぐことを想像してほしいのですが、熱湯を注ぐと外気との温度差が生じて割れてしまいます。

スマホを外部から無理やり冷やすとこれと似たようなことが発生する懸念があります。熱のこもったアツアツの本体を外側から氷などで冷やすと、冷やされた側の部品は収縮する一方で熱源側の部品は冷却が間に合わないことになり、その部品に応力がかかります。また、同じように温度変化した場合であっても熱膨張率の違いにより熱応力が加わる部品もあります。この熱衝撃によって電池が破損することはまずありませんが、デバイスのはんだに亀裂が入る懸念があります。

もちろん、熱衝撃試験と言って信頼性試験として実施していますが、これはあくまで耐久試験であり、そういった用途を想定して行っている試験ではありません。

もし冷却が必要な場合は、充電をいったん中止したり、しばらく電源や画面を切って放電を抑えるか、強制冷却するにしても扇風機に当てるなどの空冷で緩やかに温度を下げることをおすすめします。

 

まだまだ書きたいことはたくさんあるのですが、既にこの記事を半年寝かせているのでいったんここまでで投稿させていただきます。

最後まで読んでいただきありがとうございます。